2015/11/01

第14回世界点字作文コンクール入選作品発表

 

オンキヨー株式会社、毎日新聞社点字毎日と公益財団法人「日本教育科学研究所」が開催いたしました、
第14回オンキヨー世界点字作文コンクールの入選作品が決まりましたのでお知らせいたします。

本年も、世界中から多数の心に響く作品をお送りいただき、ありがとうございました。
最優秀オーツキ賞には、

・ 日本国内は永井 慶吾さん(茨城県立盲学校小学部6年 11歳 男性)
・ アジア・太平洋地域は、エルデネサンブー・デルゲルバヤルさん(モンゴル 48歳 女性)
・ 西アジア・中央アジア・中東地域は、シーマ・パフジャさん(インド 48歳 女性)
・ ヨーロッパ地域は、テレサ・デデルコさん(ポーランド 61歳 女性)
・ 北米・カリブ地域は、ラリー・ジョンソンさん(アメリカ 83歳 男性)

が選ばれました。おめでとうございます。

 

 オーディオ・ビジュアル機器メーカー「オンキヨー株式会社」と公益財団法人「日本教育科学研究所」、「毎日新聞社 点字毎日」は、人を結ぶぬくもりをより身近に感じておられる視覚障害者の世界に、点字と音の懸け橋をしっかり築きたいという願いから、2003年に「オンキヨー点字作文コンクール」を創設しました。04年からは海外部門も設けて拡大し、11年の第9回からは「オンキヨー世界点字作文コンクール」として毎年実施しています。

 第14回を迎えた今年のコンクールは、国内部門のほか、海外部門で、世界盲人連合アジア・太平洋地域協議会(WBUAP、21カ国・地域=日本を除く)、アジア盲人連合(ABU、西アジア・中央アジア・中東地域、21カ国)、ヨーロッパ盲人連合(EBU、ヨーロッパ地域、45カ国)、北米・カリブ地域協議会(WBU-NAC、21カ国)の108カ国を対象に作品を募集。世界的な作文コンクールとして、異文化コミュニケーションの輪を広げ、複雑化する国際社会をつなぐ懸け橋となっております。

 さらに昨年から、音楽との融合を考え、国内部門で「作詞賞」を設けました。一昨年、視覚障害者の家族、学校や職場、地域で接する方に思いを寄せてもらうため設けた「サポートの部」と合わせ、広く輪が広がることを期しました。今年はこの作詞賞に、ボーカリストで作編曲家の徳永暁人さんに曲をつくっていただきました。国内、海外の視覚障害者の思いや生き方が、読んで下さる皆様に伝わり、共に生き、共に奏でる温かいハーモニーが社会に響けばと願っています。

●国内部門の表彰式は、入選者を代表して、 最優秀オーツキ賞の永井慶吾さんと作詞賞の田崎博基さんを 東京都中央区のオンキヨー八重洲ビルにお招きして、11月7日におこないました。

●海外部門の表彰式は、入賞各国においておこないました。

素直な心と強い意志

公益財団法人 日本教育科学研究所
理事長 大朏 直人(おおつき なおと)

 

 開催から14回目を迎える今年は例年にも増して各部門で力作が揃いました。特に学生部門の審査会では白熱した議論が交わされ、開催以来初となる小学生の作品が最優秀オーツキ賞を受賞いたしました。また、昨年新設された作詞賞には曲をつけて楽曲として表彰式で披露されることとなり、今回は特に印象に残るコンクールでした。

 オーツキ賞を受賞された永井慶吾さんの作品はシンプルな表現でありながら、純粋で強い意志がストレートに伝わってきました。手助けされることへの感謝の気持ちを忘れず、しかしいつも甘えるばかりではなく時には断る勇気を持って行動したいという自立した考えが素晴らしく、障がい者と健常者との関わり方を考えさせられる内容にもなっており、審査員の大人たちは一同に圧倒されました。

 海外WBU-AP(世界盲人連合アジア・太平洋地域協議会)地域最優秀オーツキ賞のデルゲルバヤル・エルデネサンブー(モンゴル)さんの作品では、視覚障がいによる困難や苦労があったとしてもそれを必ず乗り切るのだという固い決心の下、優れた聴覚を活かして音響関係の仕事に就かれ、その間にもコンピューターや英語の勉強をされるなど挑戦を続ける前向きな人生が描かれており、とても頼もしく感じられました。海外ABU(アジア盲人連合)最優秀オーツキ賞のシーマ・パフジャ博士(インド)の作品はとても考えさせられる内容でした。人間は他の生物より遥かに広く優れた活動領域を持ち、計り知れない知的能力にも恵まれているにもかかわらず、欲望や差別や宗教の違いなどで争い続け、平和でいられない。しかし、「平和を実現する最も強力な武器は愛」であると断言されています。その想いを世界中の人が持ってくれればと私も願うばかりです。海外EBU(ヨーロッパ盲人連合)最優秀オーツキ賞のテレサ・デデルコ(ポーランド)さんの作品では、本を読むのが何より好きで、図書館員として働きご自身の子供に本を読み聞かせてあげる、人生を豊かにし人生に欠かせない存在である点字への想いが強く伝わりました。点字を生んだルイ・ブライユへの敬意を忘れることなく、誇りを持ってこれからも人生を歩まれることと思われます。海外WBU-NAC(世界盲人連合北米・カリブ地域協議会)最優秀オーツキ賞のラリー・ジョンソン(アメリカ)さんは82歳の高齢でおられますが、その人生の75年以上を点字とともに生きてこられました。点字にまつわる楽しいエピソードや悲しいエピソードをご披露されていますが、どれもが情景が思い浮かべられる生き生きとした文章で楽しく読み進められました。これからもお元気で沢山の方々と交流を持って楽しい日々を送られることだろうと思います。

 そして「作詞賞」は昨年同様、歌人の松村由利子さんに優秀作3点を選考いただき、さらには今回作曲された徳永さんにもご協力いただき選考いたしました。受賞された田崎博基さんの作品は、とても美しい情景描写に切ない心情が見事に重なり、とても感動を呼ぶ作品でした。徳永さんの美しいメロディも相まって本当に素晴らしい楽曲に仕上がりました。

  最後になりましたが、本年も心に響く素晴らしい作品を届けて下さった皆様、心からお礼を申し上げます。そして共催者として長年多大なるご支援をいただいております、毎日新聞社様、点字毎日様、参加各国への作品募集や審査・表彰を執り行っていただいたWBU-AP、ABU、EBU、WBU-NACの皆様、ならびに各国でご支援いただいた方々に心よりお礼申し上げます。

 グローバル化が進む中、さまざまな立場の人同士が理解し合って共存する世界はますます望まれていることは想像に難くなく、私たちは平和で思いやりに満ちた日々を未来に向かって築いていかなければなりません。本コンクールがその一助となり、点字がさらに広く普及し、ますます異文化コミュニケーションの交流が拡がることを心より願います。

 

過去の入選作品