2015/11/01

オンキヨー株式会社、毎日新聞社点字毎日と公益財団法人「日本教育科学研究所」が開催いたしました、
第13回オンキヨー世界点字作文コンクールの入選作品が決まりましたのでお知らせいたします。

 

本年も、世界中から多数の心に響く作品をお送りいただき、ありがとうございました。
最優秀オーツキ賞には、

・ 日本国内は、山本 道子(やまもと みちこ)さん(岐阜県 62歳 主婦)
・ アジア・太平洋地域は、デイヴィッド・コヴァシックさん(オーストラリア 56歳 男性)
・ 西アジア・中央アジア・中東地域は、R.S.N. カルナラトゥネさん(スリランカ 46歳 女性)
・ ヨーロッパ地域は、イワノフ・ウラディスラフさん(ロシア 14歳 男性)
・ 北米・カリブ地域は、ダニエル・バートンさん(アメリカ 21歳 女性)

が選ばれました。おめでとうございます。

 

 オーディオ・ビジュアル機器メーカー「オンキヨー株式会社」と公益財団法人「日本教育科学研究所」、「毎日新聞社 点字毎日」は、人を結ぶぬくもりをより身近に感じておられる視覚障害者の世界に、点字と音声の懸け橋をしっかり築きたいという願いから、2003年に「オンキヨー点字作文コンクール」を創設しました。04年からは海外部門も設けて拡大し、11年の第9回からは「オンキヨー世界点字作文コンクール」として毎年実施しています。

 第13回を迎えた今年のコンクールは、国内部門のほか、海外部門で、世界盲人連合アジア・太平洋地域協議会(WBUAP、21カ国・地域=日本を除く)、アジア盲人連合(ABU、西アジア・中央アジア・中東地域、21カ国)、ヨーロッパ盲人連合(EBU、ヨーロッパ地域、45カ国)、北米・カリブ地域協議会(WBU-NAC、21カ国)の108カ国を対象に作品を募集。世界的な作文コンクールとして、異文化コミュニケーションの輪を広げ、複雑化する国際社会をつなぐ懸け橋となっております。

 さらに今回から、音楽との融合を考え、国内部門で「作詞賞」を設けました。昨年、視覚障害者の家族、学校や職場、地域で接する方に思いを寄せてもらうため設けた「サポートの部」と合わせ、広く輪が広がることを期しました。国内、海外の視覚障害者の思いや生き方が、読んで下さる皆様に伝わり、共に生き、共に奏でる温かいハーモニーが社会に響けばと願っています。

●国内の部の表彰式は、入選者を代表して、最優秀オーツキ賞の山本道子さんと作詞賞の藤森里枝さんを
  東京都中央区のオンキヨー八重洲ビルにお招きして、11月9日におこないます。

●海外の部の表彰式は、入賞各国においておこないます。

新しく生まれる力と絆

公益財団法人 日本教育科学研究所
理事長 大朏 直人(おおつき なおと)

 

 今年で13回を迎えるオンキヨー世界点字作文コンクール、今年は例年にも増して多彩な作品が寄せられ、それらすべてが甲乙つけがたく審査は難航いたしました。また昨年の「サポート賞」に加えて「作詞賞」を新設したことで、さらに新しい世界に触れることができ、嬉しく感じております。

 その中で見事国内最優秀オーツキ賞を受賞されました山本道子さんの作品は、ご友人との優しさあふれる気持ちのやり取りが、「金色のハーモニカ」という曲にまで結実するというとても感動的なものでした。
海外WBU-AP(世界盲人連合アジア・太平洋地域協議会)地域最優秀オーツキ賞のデイヴィッド・コヴァシックさん(オーストラリア)の作品では、命にかかわる大病を患った後に視力を失われたにも関わらず、そんな苦労を全く感じさせないほど全編にわたりデイヴィッドさんの挑戦が明るく書かれていて、読んだ私の気持ちも明るくなりました。視力を失われたことで嗅覚が鋭くなったことをボーナスと喜び、家族やボランティアの方々への感謝の気持ちを持ち、そしてあらゆることに挑戦して楽しむ。人生これから!ですね。海外ABU(アジア盲人連合)最優秀オーツキ賞のR.S.N. カルナラトゥネさん(スリランカ)は視覚障がい者のコミュニケーション手段としてのソーシャルメディアの利用について、その有用性を認めつつも、従来の現実生活におけるつながりが重要で、それを作るための手段として活用すべきと指摘されています。あくまでも現実生活を大切にすべきだと実感した作品でした。海外EBU(ヨーロッパ盲人連合)最優秀オーツキ賞のイワノフ・ウラディスラフさん(ロシア)の作品では、イワノフさんは本を読み、本から知識を得ることが一番の価値だと感じていただけに、視力を失ってしまった時の絶望感は想像を絶するものだったかと思います。しかし、点字に出会ったことで、また本を読むことができるようになり、人生の可能性が広がり希望を取り戻せることができたようですね。これからもどんどん新しい本と出会って、さらなる豊かな人生を送って欲しいと思います。

 海外WBU-NAC(世界盲人連合北米・カリブ地域協議会)最優秀オーツキ賞のダニエル・バートンさん(アメリカ)の作品はこれまでの作品にはなかった、触図に関する内容でした。点字は文字を読むためのものですが、盛り上がった線や形を触ることで地図や絵なども理解できる。ダニエルさんは、触って感じることへの恐怖を抱いていたため高校まで触図を避けていましたが、より知識を得るには点字も触図も同じように大切なことだと理解されます。一歩踏み出すことで新しい世界が広がったのだと思います。これからも勇気を持ってどんどん新しいことにも挑戦していって欲しいと思います。

 そして「作詞賞」で応募された作品については、歌人/童話作家としてご活躍中の松村由利子さんにご協力いただきました。優秀賞に輝かれた藤森里枝さんの「イエローライン」は点字ブロックをイエローラインと表現されたことと、それが人生に深く関わっていることの重要さを気づかせてくれる、心のこもった作品でした。

 最後になりましたが、本年も心に響く素晴らしい作品を届けて下さった皆様、心からお礼を申し上げます。そして共催者として長年多大なるご支援をいただいております、毎日新聞社様、点字毎日様、参加各国への作品募集や審査・表彰を執り行っていただいたWBU-AP、ABU、EBU、WBU-NACの皆様、ならびに各国でご支援いただいた方々に心よりお礼申し上げます。

 グローバル化が進む現代に生きる私たちは、さまざまな立場の人同士が理解し合って共存する世界を、未来に向けて築いていかなければなりません。本コンクールがきっかけとなって世界中に点字がさらに普及し、ますます異文化コミュニケーションの交流が拡がることを心より願います。

 

過去の入選作品