2018/11/01

第16回世界点字作文コンクール入選作品発表

 

オンキヨー株式会社、毎日新聞社点字毎日と公益財団法人「日本教育科学研究所」が開催いたしました、
第16回オンキヨー世界点字作文コンクールの入選作品が決まりましたのでお知らせいたします。

本年も、世界中から多数の心に響く作品をお送りいただき、ありがとうございました。最優秀オーツキ賞には、

・ 日本国内は竹保 遥さん(京都市 22歳 女性)
・ アジア・太平洋地域は、キーラ・ジラさん(中国(チベット) 33歳 女性)
・ 西アジア・中央アジア・中東地域は、アシッシュ・ドゥベイさん(インド 26歳 男性)
・ ヨーロッパ地域は、アネット・アッカーマンさん(オランダ 56歳 女性)
が選ばれました。おめでとうございます。

 

 オーディオ・ビジュアル機器メーカー「オンキヨー株式会社」と公益財団法人「日本教育科学研究所」、「毎日新聞社 点字毎日」は、人を結ぶぬくもりをより身近に感じておられる視覚障害者の世界に、点字と音の懸け橋をしっかり築きたいという願いから、2003年に「オンキヨー点字作文コンクール」を創設しました。04年からは海外部門も設けて拡大し、11年の第9回からは「オンキヨー世界点字作文コンクール」として毎年実施しています。

 第16回を迎えた今年のコンクールは、国内部門のほか、海外部門で、世界盲人連合アジア・太平洋地域協議会(WBUAP、21カ国・地域=日本を除く)、アジア盲人連合(ABU、西アジア・中央アジア・中東地域、22カ国)、ヨーロッパ盲人連合(EBU、ヨーロッパ地域、42カ国)の加盟国を対象に作品を募集。世界的な作文コンクールとして、異文化コミュニケーションの輪を広げ、複雑化する国際社会をつなぐ懸け橋となっております。

 さらに2015年からは音楽との融合を考え、国内部門で「作詞賞」を設けました。2014年、視覚障害者の家族、学校や職場、地域で接する方に思いを寄せてもらうため設けた「サポートの部」と合わせ、広く輪が広がることを期しました。本年もこの作詞賞受賞作品に、ボーカリストで作編曲家の徳永暁人さんに曲を作っていただきました。国内、海外の視覚障害者の思いや生き方が、読んでくださるみなさまに伝わり、共に生き、共に奏でる温かいハーモニーが社会に響けばと願っています。

●国内部門は11月13日大阪市北区のオーバルホールで表彰式を開催いたします。表彰式には、竹保さん、福井さんの受賞者のほか、作詞賞受賞作に曲をつけていただいたボーカリストで作編曲家の徳永暁人さんが出席され、生の演奏で受賞曲が披露されます。

●海外部門の表彰式は、入賞各国においておこないます。

点字がもたらす新しい世界

公益財団法人 日本教育科学研究所
理事長 大朏 直人(おおつき なおと)

 

 今回は視覚障害者の可能性を拡げ社会参加の機会を得るために、点字が重要な役割を果たしていることをテーマにした作品が多く、本コンクールの基本精神に立ち返ったような思いがいたしました。

 国内最優秀オーツキ賞を受賞された竹保遥さんの作品は、点字に出会って本の世界の楽しさに出会い、かけがえのない友人の優しさに出会い、将来は点字を子供たちに教える仕事に就きたいという、点字が夢と希望につながる大切な存在であることが伝わる作品でした。

 海外WBU-AP(世界盲人連合アジア・太平洋地域協議会)地域最優秀オーツキ賞のキーラ・ジラ(中国・チベット)さんの作品では、ご自身が12歳の時、国境なき点字財団が運営するチベットで最初の視覚障害者用施設に入ることで点字をマスターされ、身の回りのことができるようになり、さらには他の視覚障害者を支援する幼稚園を設立されます。周囲の視覚障害者へ偏見や差別がなくなるために、これからも活動したいという強い気持ちに頭が下がる思いでした。海外ABU(アジア盲人連合)最優秀オーツキ賞のアシッシュ・ドゥベイ(インド)さんの作品は、視覚障害者がどうしたら自立できるのかということをテーマにしたものでした。自立には物理的なものと精神的なものがあり、それを成し遂げるために点字はじめトーキングブック、スクリーンリーダー、スマートケーン(電子白杖)とスマホなど進化するツールを使いこなすことが有益であり、そして周囲の無理解にも負けず自立に到達しようとする意志と自信を持つことの重要性を伝えておられました。海外EBU(ヨーロッパ盲人連合)最優秀オーツキ賞のアネット・アッカーマン(オランダ)さんの作品では、視覚障害者であるご自身の姉妹が特別学校に通い点字を学ぶことで自立できたことから、ジンバブエで出会った少女にも点字を学んでもらうことで勉学の成果を上げ、成長していく過程が描かれています。このように視覚障害者が知識を得て、新しい世界を切り拓いていくために点字がどれほど有効であるかということ、そして点字で学んだことを他の視覚障害者にも伝えていきたいと思われる方が多いことに大変感銘を受けました。さらなる夢の実現に向けてこれからも前向きに物事に取り組まれることを、心から期待しております。

 最後に「作詞賞」は、歌人の松村由利子さんに優秀作3点を選考いただき、作曲いただいた徳永さんにもご協力いただき選考いたしました。受賞された福井宏郷さんの作品は、短い言葉でも情景、感覚が伝わってくる表現で、おおらかで明るいその人柄が窺えます。徳永さんにはとても前向きな気持ちになる、清々しく力強い楽曲に仕上げていただきました。

 最後になりましたが、本年も心に響く素晴らしい作品を届けて下さった皆様、心からお礼を申し上げます。そして共催者として長年多大なるご支援をいただいております、毎日新聞社様、点字毎日様、参加各国への作品募集や審査・表彰を執り行っていただいたWBU-AP、ABU、EBUの皆様、ならびに各国でご支援いただいた方々に心よりお礼申し上げます。

 グローバル化が進む中、さまざまな立場の人同士が理解し合って共存する世界を築くこと、平和で思いやりに満ちた日々を未来に向かって築いていくことは、今後ますます重要なことであると感じています。本コンクールがその一助となり、さらに異文化コミュニケーションの交流が拡がることを心より願っています。